デシベルdBがよくわかる

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音の大きさを表すときにデシベルdBがよくつかわれますね。
感覚としては

  • 静かな公園で聞こえる木々の葉が揺れる音が20dB
  • あなたが人と会話するときのの大きさは60dB
  • 夏にミンミンうるさいセミの鳴き声が90dB

です。
実はデシベルdBは音の大きさ(音圧)だけを表す単位ではありません。
正しくは基準値に対してどのくらいの値か(レベル表現)を表す単位です。

 

 

 

 

 

1単位デシベルdBの成り立ち


まず「dBという単位はデシベルさんが作った単位」ではないので注意してください。
デシベルdBは単位デシdと単位ベルBの2つの単位で成り立っています。
単位ベルBはアレクサンダー・グラハム・ベルさんが作った単位です。ベルさんは電話を実用化させた人です。
デシdは1/10を表すのでデシベルdBはベルBという単位を1/10倍した値となります。
ではベルBという単位は何を表すのでしょうか。
そのまえに単位には2種類あることを知っておきましょう。

 

2絶対単位と相対単位


単位には絶対単位と相対単位の2種類あります。
[絶対単位]
長さを表す単位メートルm、
時間を表す単位セカンドs、
体積を表す単位リットルL
など日常でよく使われる単位はすべて絶対単位です。
[相対単位]
複数の対象物を比較したいときどのようにすればよいでしょうか。
一つ、基準となるものを選んでそれに対する比で表すことで比較しやすくなりますよね。
AはBの2倍という時の[倍]にあたる単位が相対単位です。[倍]を相対単位と考えてもらっても構いません。
相対単位の例としてはパーセント%があります。

単位ベルBはどちらでしょうか。
答えを言うと相対単位です。ではベルBについて詳しく見ていきましょう。

 

3相対単位ベルB


2つの値α、βを比較したいとき、αはβの何倍かを考えますよね。
何倍か求めるには単純に比較したい値αを基準とする値βで割ればよいので
α/β[倍]
で求まります。αとβの桁数が近いときはこの比較方法で十分ですよね。
ですが桁数が大きく異なると不便になります。
例えば
α/β=10万5000
となったとき、とにかくαは大きいとしか認識できませんよね。
多くの人はおよそ3桁までが感覚の限界でしょう。
ではα/βの桁数を下げることができれば比較しやすくなりますよね。
桁数を下げるときに対数がよくつかわれます。

 

 
対数

 

正の値xが
x=y^z……①
で表せるとき、zをyを底としたときのxの対数といいます。
これを
z=logy(x)……②
と表記します。
②は①の両辺にlogyを付けることで表せます。
(この作業を「両辺に底をyとする対数をとる」といいます。)
logy(x)=logy(y^z)……③
logy(y^z)はyを何乗したらy^zになるかを表しているので
z=logy(y^z)……④
ですね。
④を③に代入して②が導出されます。
④より対数をとることで指数部zが下に降りてきていることから対数をとると桁が小さくなるの意味が分かります。

 

 

 

 

底が10の常用対数Logをα/βにとります。
すると上の例は
Log(α/β)=Log(10万5000)
≒5
となるので途端にイメージしやすくなります。
このときの単位をベルBといいます。(α、βがエネルギー値[J]である場合のみ)
当然、対数をとっているのでαはβの5倍ではありません。
βを基準としたときαは5[B]といえます。
すなわちベルBとは桁数の差が大きいαとβを比較しやすい、
Log(α/β)
につける単位というわけです。
(αとβの桁数の差が小さくてもよい)

3なぜデシdを付けるのでしょうか。
単にdを付けた方が感覚と合致していたからでしょう。
頻繁に使われる値が0.5、0.8であったら、10倍した5、8のほうがいいですよね。
Log1=0
Log2=0.301
Log5=0.698
Log10=1
あたりの数が10倍された方が便利なのでしょう。
なぜペットボトルの容量にデシリットルdLではなくミリリットルmLを採用するのかという問と一緒です。

4デシベルdB


最終的にデシベルdBは
Log(α/β)[B]
=Log(α/β)*10*1/10*[B]
=10Log(α/β)*1/10*[B]
=10Log(α/β)*[d]*[B] (∵1/10=[d])
=10Log(α/β)[dB]
でもとまるというわけです。
(デシベルdBはベルBを単に定数倍しただけなので相対単位です。)

 

5ここで注意


デシベルdBはα、βがエネルギー値、つまりジュールJで表される場合にのみつけることができる単位だということです。
もともとデシベルは電力の変化を調べるために作られた単位なのでα、βの単位はワットWでした。
W=J/sより1秒間当たりのエネルギーです。
α、βをそれぞれ電力W1[W]、W2[W]とすると電力の変化は
10Log(W1/W2)[dB]
で求まります。
しかし電圧の変化を調べるためにα=V1[V]、β=V2[V]をそのまま代入することはできません。
つまり
10Log(V1/V2)[dB]
はダメということです。
ダメな理由はV1、V2の単位がボルトVだからです。
電圧の変化を知るにはどうしたらよいでしょうか。
この値をエネルギー(電力)にすればよいというわけです
ここで以下のことを知っておきましょう。
「電力は電圧の2乗に比例する」
この性質から電力W1、W2は
W1=a*V1^2
W2=a*V2^2
(a:定数)
となるのでこれを代入し、
10Log(W1/W2)
=10Log(a*V1^2/a*V2^2)
=10Log(V1/V2)^2
=2*10Log(V1/V2)
=20Log(V1/V2)[dB]
と求まります。
この式は本質的に電力の変化を表していますが電圧の変化として
20Log(α/β)[dB]
が使用されます。この値を増幅率といいます。
電圧に限らず、エネルギーが2乗で求まる場合上式を使用します。

 

6音の大きさを表す単位でなぜデシベルdBを使うか


音は空気などの媒体を伝わって聞こえます。(ここでは媒体を空気に限定します。)
ゆえに音の大きさは空気を押す力(音圧)で表せるのではないでしょうか。
押す力は圧力なので単位はパスカルPaですね。(パスカルPaは絶対単位)
ですがそのままパスカルを使うと不便なのです。
静かな公園で聞こえる木々の葉が揺れる音とあなたが人と会話するときの声の大きさの
音圧の桁数が2つも違ってくるなど、状況によってすぐ桁が変わってくるので比較する単位としてパスカルPaは不適切なのです。
ここで基準となる音圧と比較することで認識しやすくできます。
基準とするのは、人間が聞き取れる一番小さい音の大きさ20[μPa]です。
ここで注意しなければならないのは、デシベルで比較できるのはエネルギーだけということです。
以下のことを知っておきましょう。
「音のエネルギーは音圧の2乗に比例する」
ゆえに
10Log(α/β)[dB]
ではなく
20Log(α/β)[dB]
を使用します。基準となるのはβなのでβに最小可聴音圧20[μPa]を代入します。
すると任意の音の大きさP[μPa]のデシベル
20Log(P/20)[dB]……(*)
で求まるというわけです。
ここで求まった値、すなわち最小可聴音圧を基準としたデシベルを音圧レベルといいます。
音圧レベルの単位はデシベルdBでもよいのですがdBsplと書かれることがあります。
splはsound pressure levelの略です。

 

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7デシベルに慣れる


最小可聴音圧の音圧レベルはいくつでしょうか。
音圧はP=20[μPa]なので(*)に代入し、
20Log(P/20)
=20Log(20/20)
=0[dB]
ゆえに0[dB]ですね。


静かな公園で聞こえる木々の葉が揺れる音の音圧レベルはいくつでしょうか。
音圧はP=200[μPa]なので(*)に代入し、
20Log(P/20)
=20Log(200/20)
=20[dB]
ゆえに20[dB]ですね。最初に書いた値と一致しましたね。


あなたが人と会話するときの声の音圧レベルはいくつでしょうか。
音圧はP=20000[μPa]なので(*)に代入し、
20Log(P/20)
=20Log(20000/20)
=60[dB]
ゆえに60[dB]ですね。これも最初に書いた値と一致しましたね。

20[dB]と60[dB]を比較してみましょう。
差は
60-20=40[dB]
ですね。
40[db]は音圧では100倍を表していることが分かります。
60-20
=20Log(20000/20)-20Log(200/20)
=20Log(20000/200)
20000/200が倍率を表しているのでデシベルの差で倍率が認識できます。


では1dBが表す倍率xはいくつでしょうか。
1=20Log(x)
x=10^(1/20)
=1.1220184543
≒1.1倍
1dBは1.1倍を表すんですね。
一般化すると
「y[dB]は10^(y/20)倍を表している」
といえます。
デシベルが20の倍数のときのみ整数倍になることが読み取れます。

 

今度は60dBの音源が2つある場合、音圧レベルはいくつになるでしょうか。
単にデシベルが2倍にならないことは分かりますよね。
2倍になるのは音圧20000[μPa]であることに注意し、
20Log(20000*2/20)
=20Log(20000/20)+20Log2
=60+20*0.301
=60+6.02
=66.02[dB]
と求まります。
つまり音源が2倍に増えたときの音圧レベルは
音源が1つのときの音圧レベルに6.02[dB]を足せばいいんだね。
一般化すると
「音源がx倍に増えたときの音圧レベルは
音源が1つのときの音圧レベルに20Log(x)[dB]を足せばいい」
ということになります。

いろんな計算をしてデシベルに慣れよう。


音圧レベル[dBspl]が最小可聴音圧を基準にしているように、様々な値を基準にしたデシベルが存在します。

 

8違和感(読む必要なし)


(a)静かな公園で聞こえる木々の葉が揺れる音の音圧レベルは20dB
(b)あなたが人と会話するときの声の音圧レベルは60dB
(c)2つの音圧レベルの差は40dB(=100倍)

(a)と(b)は最小可聴音圧20[μPa]を基準にしている。
(c)は引いた音圧(静かな公園で聞こえる木々の葉が揺れる音の音圧200[μPa])を基準にしている

すべて相対単位デシベルdBを使っているのだが(a)(b)は絶対性、(c)は相対性が強く認識される。

dBは相対単位だが(a)(b)のような特定の音圧レベルは絶対値として考えた方がよい気がする。

 

9まとめ

 

なぜデシベルで表すかを覚えてる?

比較したいデータが大きな変動をする場合に値を認識しやすくするためでしたね。

大きな変動の仕方を分析すると指数関数的であることがあるんだ。自然界には意外にもこの指数関数的に変動する現象がたくさんあるらしいよ。

そう考えるとデシベルは出るべくして出た単位だといえますね。